ナトリウム系フラックスが引き起こす3つ目の異変(後編&まとめ) / The Triple Threat of Sodium in Aluminum Casting(Part2/2)

AIによるイメージイラストです.※当社よる徹底洗浄は溶湯がある状態で行います.

前回、ナトリウムはアルミ合金溶湯の湯面の皮膜を変化させ、水素吸収、酸化物の増加、湯流れ性低下の原因になるということと、

そして、添加してないから関係ないと思っていても実はフラックス経由でナトリウムが溶湯(溶融アルミ)に入ってしまっているケースが非常に多いこともお伝えしました.

...例えそうだとしても「ナトリウムは飛ぶから溶湯に残らないと聞いたことがあるし、どうなの?」と思われた方もいるかもしれません.

通常の熔解〜保持温度域でナトリウムの蒸発はこぐわずかで、酸化や化合反応によるナトリウム消費(フェーディング)が支配的です.

ほとんどのナトリウムは飛ばずに化合物化して、そのぬれ性のために溶湯中に分散・滞留しやすく、もはや分離できない状態になります.さらに当社の熱分析では、Srではフェーディングとともに共晶開始温度が元の状態へと戻るのに対し、Naはフェーディングしたとしても低下した共晶開始温度はその後も元の値に戻らない傾向が確認されています.

Naがこのような不可逆的なダメージを溶湯に残す原因については、溶湯中でのナトリウム酸化物やアルミノシリケート(ガラス相)形成との可能性が考えられますが、詳細なメカニズムについては今後の研究が必要です.とはいえ、事実は確認されていますので、皆さんは現場に活かせばいいだけです.

このようにナトリウム汚染された溶湯は(原因や機序は解明されていませんが)Siの凝固が始まりにくいために引け巣やSi偏析が起こり得ます.湯流れも悪いのでダイカストで二枚皮が起きます.どうしても冷えにくく凝固しにく場所にはBifilm(バイフィルム ※前回参照)と水素ガスも寄ってきますので、しばしば見かける「引け巣とガスと酸化物の複合欠陥」になります.

心当たり、ありませんか

当社の徹底洗浄時には炉底や炉壁から青みがかったものが浮き上がってくることはよくあり、これは当社のフラックスで除去されたナトリウムです.ナトリウム由来の反応物が炉内に長期間残存していることを示唆しています.

何度も言いますが、ナトリウム系フラックスは鋳造欠陥の原因です

さて本編の続き(後編)のスタートです


AIによるイメージイラストです.

炉壁を蝕むナトリウムフラックスの恐怖

反応性が高いナトリウムは炉壁の耐火物とも反応しやすくなり、炉の損傷や寿命低下の原因となります.

特に問題となるのは、ナトリウムを含むドロスや反応生成物のぬれ性の高さ(=分離性の低さ)と耐火物表面に強く固着する点です.ドロスと一緒に除去しようとしてもビクともしない場合があり、無理にこそぎ落とそうとすると耐火物表面が削れ、炉体の損傷につながります.

主なメカニズムは次のように考えられています.

1. 耐火物のガラス化(脆化・低融点化)

ナトリウムは耐火物の主成分であるシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)と反応し、ナトリウムアルミノシリケートなどのガラス相を形成することがあります.このガラス相は耐火物の粒界に生成され、結晶同士の結合を弱め、ぬれ性が高いため湿布のように張り付いて耐火物組織の脆化が進みます.

2. 高いぬれ性に起因する毛細管攻撃

一方で、カリウム系フラックスを使用した場合にも低融点相が生成する可能性はあります.しかしナトリウム系とはその挙動が大きく異なります.

その違いは「ぬれ性」です

ナトリウム:ぬれ性(高↑↑↑↑↑)10だとしたら
カリウム:ぬれ性(低↓↓↓)2か3
※相対的なイメージです

ナトリウムを含む反応生成物は、耐火物や溶湯に対するぬれ性が高く表面張力も弱く、炉壁や溶湯表面に強く付着するだけでなく、耐火物の微細な気孔へ浸透しやすくなり、多孔質構造中へ毛細管作用によって内部まで侵入し深いところで脆化が進みます.

そして耐火物内部に浸透した溶湯やナトリウムが成分が反応すると、新たな化合物の生成に伴う体積変化が生じます.これに加え、生成相と母材との熱膨張係数の差により、加熱・保持サイクルのたびに内部応力が蓄積されます.その結果、耐火物内部に亀裂が発生し、表面がウロコ状に剥がれ落ちます.

一度剥離が始まると、そこからさらに浸食が進む悪循環に陥り、炉の寿命は大きく短くなります.

カリウム系フラックスの場合は、反応生成物の粘性も低く、耐火物や溶湯に対するぬれ性も小さく表面張力も強いため、溶湯中から分離して浮上・排出されやすい傾向があります.また炉壁にもベタベタと粘着しません

3. 固着ドロスの除去による機械的損傷

ナトリウムを含む酸化物や反応生成物は耐火物表面に強く固着するため、日常の清掃時に無理な除去作業が必要になる場合があります.このとき、化学的に脆くなった耐火物表面をスクレーパーなどで削ることで、表層が剥ぎ取られ、摩耗が加速します.このような機械的損傷の蓄積が、炉の寿命を大きく縮める要因となります.

溶湯や混ぜ棒、滓取り棒との接触によって削れやすい状態となり、浸食が進行します.

溶湯だけでなく、炉も傷めます...

 

ナトリウムの影響(まとめ)

AIによるイメージイラストです.

先週の内容と合わせて総括すると、ナトリウム系フラックスは「静かな破壊者」でもあるということです.

ナトリウムはAl-Si合金の共晶組織を微細化する改良機能もありますが、同時に溶湯表面の酸化皮膜を変化させ、水素吸収、酸化物の増加、流動性の低下、さらには炉壁の劣化まで引き起こす可能性を持っています.

ナトリウムは「残留し粘着する反応」、カリウムは「分離する反応」と言い換えることができます.
ナトリウム系フラックスにはデメリットしかありません.
不良対策の第一歩は今のフラックスを止めることです.

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今のフラックスをやめて、どうするか

当社のカナエフラックスに切り替えてください.もしくは、今お使いのフラックスのSDSを送っていただけたらご相談に乗れます.熱分析装置で調査したところ、ちゃんと効く他社製フラックスは2種類だけです

カナエフラックスは1箱(20kg)からお求めいただけます

しかし、切り替えてすぐに欠陥がゼロになるわけではありません.なぜなら、これまでに蓄積された「積年のナトリウム」が炉壁や炉底にこびり付いているからです.じわじわ取れてきますが、除去できるまでには時間がかかります.炉壁や炉底から取れたナトリウムは溶湯に移るのでその影響はしばらく出ます.

AIによるイメージイラストです.

積年のナトリウムの影響をなくすためには、1回の処理で取り切ることです.

みなさんでやりたいお気持ちはわかりますが、できません
専用の道具があるからです

また、道具があっても徹底的にはおそらくやれないです.
どこまでやれば良いかがおそらくわからないからです.
こんなもんかな?でやめてしまうと、取りきれてません.

有料ですが当社に洗浄を依頼してください
当社の処理を見てからなら2回目以降はできるかも知れません

教えながらの徹底洗浄は無理(1回目は当社も必死の洗浄作業ですので教えている余裕はありません)ですので、別途そのための技術指導は可能です

リセットした後に当社フラックスにすると、しばらく良い状態を維持できます

「これぐらいやらないとダメなんだ」が経験でわかるのは、そのまま御社のノウハウに残りますので、むしろお得です

AIによるイメージイラストです.

カナエフラックス

一般ナトリウム系フラックスとの違い――「混ぜる」から「分ける」へ

ナトリウムは溶湯中で酸化物との界面状態を変化させ、酸化物が溶湯を抱き込んだ「粘るノロ」になりやすくなります.いわば界面活性剤のように、本来は分離すべき酸化物と溶湯を「仲良くさせてしまう」作用です.

一方、当社フラックスは、分離すべき酸化物と溶湯を分ける働きをします.

1. 酸化物とアルミを「分ける」分離作用

ナトリウムによる「粘るノロ」の正体は、酸化物の隙間に液体アルミが入り込み保持された状態です.当社のフラックスは酸化物を捕集し、酸化物の隙間に入り込んだ液体アルミを押し出す作用があります.その結果、酸化物だけが乾いた状態で浮上しやすくなり、ノロ中のアルミ含有量が減って溶解歩留の改善や炉壁への付着低減につながります.熔解歩留が良くなりますので、当社に依頼いただくフラッシング費用やフラックス代はすぐに元が取れます

2. 反応の完結性(キレの良さ)

当社のフラックスは酸化物や不純物を捕集すると、安定した化合物の形を保ったまま速やかに浮上します.溶湯に溶け込んだり混ざり込んだりしにくいため、処理後の溶湯がすっきりしやすい特徴があります.これに対しナトリウムは溶湯中に残存する場合があり、いつまでも粘りや酸化物増加の原因として居座り続けます.

3. 炉壁保護への効果

酸化物が乾いた状態で分離されるため、炉壁への固着が起こりにくくなります.また不純物が速やかに浮上することで、耐火物の気孔へのアルミの浸透も抑えられる傾向があります.その結果、清掃時の物理的負荷が軽減され、炉の寿命維持につながります.

現在の炉の状態をチェックするセルフチェックリスト

チェック 0個
非常に健全な状態です.現在の溶湯管理を継続しましょう.

チェック 1個以上
⚠ 危険レベル
1個でも当てはまれば、1つだけということはないはずです.酸化物やナトリウム成分が炉内に蓄積している可能性があります.炉内状態やフラックスの種類を確認することをおすすめします.


保持炉の洗浄サービスのご紹介 / Restore Your Melt Quality

保持炉や汲出口の徹底洗浄で溶湯のキレを取り戻しませんか

当社のフラックスを使用した洗浄は、単に溶湯をきれいにするだけではありません.積もりに積もったナトリウム由来の「粘りの原因」も根こそぎ分離・排出します.保持炉ないを一度リセットした後、カナエフラックスを継続使用されると効果的です.追加費用はかかりますが、同時に溶湯管理勉強会や、熱分析もおお勧めします.分析結果のレポートも有料ですが承ります.

イメージです

「一度、うちの炉を見てほしい」というご相談もお待ちしております

【お問い合わせ・お見積り依頼はこちら】
info(@)kne-hitec.jp

洗浄前の様子
湯面には虹模様(干渉色)がありますが、これはAlとNaとMg系の複合酸化物です.湯面の上下動でで炉壁に酸化物が固着しています.溶湯だけをきれいにしても、湯面のナトリウム化合物と炉壁、炉底から常に汚れが供給されます.

洗浄後の様子
湯面の虹模様は消え、炉縁の汚れも取れました.カナエフラックスで処理すると、表面張力が回復してアルミナの膜が切れにくくなり、湯面が上下しても溶湯が付着しにくくなります.カナエであれば、保持炉側のヒーターの隙間の汚れも洗浄処理できます.

洗浄後に表面張力の回復したアルミ溶湯.皮膜が切れにくいので酸化物が溶湯に入って行きにくく(=水素ガスを吸いにくい)、溶湯が炉壁に再びへばりつく様子もありません(=耐火物を傷めにくい)

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